雇用切りを告げられたその日、私は心が空っぽになった。 頭では理解しようとしても、気持ちがついてこない。
悔しさなのか、悲しさなのか、怒りなのか… どれも正しいようで、どれも違うようで、 自分の感情さえ掴めなかった。
翌日、私は有給休暇を取った。 働く気力がなかったわけではない。 ただ、あの職場に行きたくなかった。
同僚たちが私をどう見るのか。 自分が壊れてしまいそうで、怖かった。
向かった先は、地元のハローワークだった。 まだ現実を受け止めきれていないのに、
“次を探さなければ”という焦りだけが、背中を押していた。
受付を済ませ、求人票が並ぶ棚の前に立ったとき、 真っ先に目に飛び込んできた求人があった。
「労働局 雇用均等指導員」
その文字を見た瞬間、胸の奥がざわついた。 仕事内容を読み進めると、そこにはこう書かれていた。
・有期雇用労働者と正規職員との均衡・均等待遇の確保
・職場におけるハラスメント防止措置の企業指導
・労務管理に関する相談対応 etc…
「これだ……!」
昨日、年齢と理不尽な評価で雇用を切られたばかりの私が、 今度は“指導する側”に回る。
あの職場に、私が正面から意見できる立場になる。
「今度は私が指導する番だ!」何かが静かに燃え上がった。
気づけば私は、迷うことなく窓口で応募を申し込んでいた。 怒りでも、復讐心でもない。
ただ、この悔しさを力に変えたかった。
しかし… 申し込みを終えたあと、ふと求人票の下の欄が目に入った。
必要な経験:企業の人事労務管理に関する知識・実務経験 労務士資格あればなお良い
……見ていなかった。
いや、正確には、平常心を失っていた私は、 “見ようとしていなかった”のかもしれない。
「やばい……経験も資格もない……」
気づいたときには、もう応募は完了していた。
静かなハローワークの空気の中で、 私はひとり、深く息を吐いた。



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