雇用切りの理由ー「泣きたいのは私のほうです…」

再出発の記録

雇用切りを告げられてから数日後、 私は直属の上司に呼び出された。

部屋に入った瞬間、上司は言葉より先に、 ぽろりと涙をこぼした。

「……ごめんね」

その一言に、胸の奥がざわついた。 文句のひとつでも言いたい気持ちはあった。 けれど、この上司は職場で一番私に親切にしてくれた人。 だから私は、精一杯の強がりを口にした。

「恨んでなんかいません。  一緒に働かせていただいたこと、感謝しています」

そう言いながら、心の奥では別の言葉が渦巻いていた。

──本当の理由を知りたい。

「雇用切りの理由が“テストの結果”なんて、  どうしても信じられません。  今回の結果は、試験を受ける前から決まっていたんですよね?」

最初は否定していた上司だったが、 やがて涙を流しながら、ゆっくりとうなずいた。

そして、ぽつりぽつりと真実を語り始めた。

年齢──薄々気づいていた理由

理由のひとつは、年齢。 それは、私自身も薄々分かっていた。

けれど、それだけではなかった。

もっと大きな理由──“意見したこと”と“立場の逆転”

一番偉い上司に私が意見したこと。 それが、上層部の逆鱗に触れたのだという。

さらにもうひとつ。

会計年度の同僚たちが、正規職員ではなく私に仕事の相談をするようになり、 会計年度の範疇を超えて行動していると見なされたこと。

私の働いていた係では、正規職員の多くが新採で、 実務経験はむしろ会計年度職員のほうが長かった。 現実として、正規職員より会計年度の仕事量が圧倒的に多い状態だった。

しかも、仕事で困っても助けてくれる正規職員はほとんどいない。 その結果、会計年度の仲間同士でさえギスギスし、 仕事の押し付け合いが起こり始めていた。

さらに追い打ちをかけるように、 正規職員が若い子に仕事を押しつけてサボることもあり、 その負担に耐えられず心を病んでいく子まで出てしまった。

そんな状況の中で──

「助けてください」

涙を浮かべて訴えてくる若い子を、 私が見捨てられるはずがなかった。

私はただ、年下の同僚たちを守りたかった。 その一心で上司に進言した。

──それが、上司の逆鱗に触れた。

「……泣きたいのは、私のほうですよ」

心の中でそうつぶやいた。

涙の「ごめんなさい」が空しく聞こえた

けれど、目の前の上司にも立場がある。 上司だって、自分より上の人には何も言えないのだろう。

「本当に、ごめんなさい」

涙を流しながら告げられたその言葉は、 申し訳ないが私には空しく聞こえた。

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